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健康診断の「C判定」 - その意味と向き合い方 -

  • 臼井亮介
  • 5月7日
  • 読了時間: 4分

更新日:2 日前


 こんにちは。株式会社レノプロテクト代表の臼井亮介です(日本腎臓学会専門医・指導医)。春の健康診断の結果が届き、「C判定」と書かれていて驚いたという方もいらっしゃるのではないでしょうか。C判定が出たからといって、すぐに治療が必要な状態とは限りません。大切なのは、その結果を正しく理解し、適切に対処することです。今回は、腎機能に関するC判定について、専門医の視点からわかりやすく解説します。





●C判定は「様子見でいい」わけではない

 C判定は、日本人間ドック・予防医療学会の判定区分のひとつで、「生活習慣の改善」や「再検査」が推奨される判定区分です。腎機能の場合、eGFR(推算糸球体ろ過量)が45~59の範囲に入るとC判定となります。この数値はすでに慢性腎臓病(CKD)の診断基準にあたります。つまり、腎機能のC判定は「今後のために生活を見直しましょう」という軽い注意喚起ではなく、「一度きちんと腎臓の状態を確認しましょう」というサインだと考えてください。




●生活習慣病のC判定と同じと考えていいの?

 健康診断では血糖(糖尿病)、コレステロール(脂質異常症)、血圧(高血圧症)や体重(肥満症)などでもC判定が出ることがあります。これらは生活習慣の見直しで改善が期待できるケースも多く、急を要しないことがほとんどです。


 では、腎機能のC判定も同じように捉えてよいのでしょうか?


 慢性腎臓病も「生活習慣病のひとつ」とされていますが、実は、腎機能は一度低下すると、基本的には元に戻りません。加えて、加齢により自然と少しずつ下がっていく臓器でもあります。そのため、気づかないうちに腎機能が半分以下に落ちてしまうこともあります。また、意外と知られていないのが、定期健康診断ではeGFRなどの腎機能項目が必須ではないという点です。たとえば、中小企業に転職した場合、健診項目から腎機能が外れてしまうこともあります。だからこそ、健診で腎機能を測る機会があったときは、その結果をしっかり見ておくことがとても大切です。



●慢性腎臓病は「気づきにくい病気」

 腎機能のC判定に関して、もう一つ見逃せないのが「病名が伝わりにくい」ということです。eGFRが60未満の状態が3か月以上続くと、慢性腎臓病(CKD)と診断されますが、この診断名が本人に伝わらないまま経過しているケースも少なくありません。実際、私の外来でも、eGFRが30前後にまで低下してから初めて受診され、「腎臓が悪いとは聞いていなかった」と話す方もけっして少なくありません。当社で行っている腎ドックでも、CKDに該当した方のうち、自身が腎臓病と認識していたのは1割未満でした。これは、腎臓病が「自覚しづらい病気」であることの表れです。



●専門医の視点ではこう見える

 C判定で内科を受診すると、「この先5年、10年で透析になることはありませんから、生活に気をつけていきましょう」と言われることもあります。このアドバイス自体は正しいのですが、腎臓内科医の目線では、少しポイントが違います。


 とくに大切なのが、「尿たんぱく」や「アルブミン尿」の有無です。これらがあると、腎機能の悪化スピードが大きく加速することが知られていますから、必要があれば生活や薬の見直しを行います。また、eGFRが45〜59という軽度の腎機能低下の段階でも、心筋梗塞・脳卒中・骨粗しょう症・認知症といった全身の病気のリスクが2〜3倍に高まっています。つまり、腎機能の低下は「腎臓だけの問題」ではないのです。腎臓内科医は、腎臓だけでなく、全身のリスクと向き合っています。


●健康診断の“落とし穴”にも注意

 健康診断はあくまでも「ふるい分け」です。とくに腎機能については、A判定でない限り「少し注意が必要かもしれない」と考えるのが適切です。もうひとつ見落としがちなのが、「経年変化」です。たとえば、eGFRが75→70→65→60→55と徐々に下がっていても、60を下回るまでは「異常」と判定されません。このため、毎年健康診断を受けていても、「いつの間にか腎機能がかなり下がっていた」ということが起こり得ます。


 慢性腎臓病を早期発見することも重要ですが、本当は、CKDになる前の段階で変化に気づき、予防につなげることが理想的です。



●まとめ:C判定を「チャンス」に変える

 腎機能のC判定は、今すぐ治療が必要なケースはけっして多くありません。でも、「今だからこそ、できることがある」――そんな前向きなきっかけにもなります。「放っておいていいのかな」と不安に思ったときは、ひとりで抱え込まずに、腎臓に詳しい医師に相談してみてください。

 株式会社レノプロテクトでは、腎臓専門医が丁寧にお話を伺う「専門医による相談サービス」を行っています。「これって相談してもいいのかな?」と思うようなことでも、どうぞ気軽にお声がけください。ほんの小さな気づきが、将来の大きな安心につながるかもしれません。

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