尿検査でわかること
- 臼井亮介
- 2023年11月1日
- 読了時間: 4分
更新日:5月1日
株式会社レノプロテクト代表の臼井亮介です(日本腎臓学会専門医・指導医)。
尿は、血液が腎臓のフィルターを通ってろ過されたものです。言い換えれば、つい数十分前まで血液の一部として体内を巡っていた液体です。尿検査は主に腎臓の状態を知るためのものですが、血液検査と組み合わせることで、全身の健康状態をより立体的に把握する手がかりにもなります。
「たかが尿、されど尿」——尿には、からだの大切な情報が詰まっています。
●尿蛋白(定性・定量)
尿は血液から作られるため、血液中に豊富に含まれる蛋白質が腎臓のフィルターを通って排泄されることがあります。正常であれば1日に排出される蛋白は0.1g以下ですが、腎臓のフィルター機能が弱ったり、フィルター自体が損傷したりすると、より多くの蛋白が尿中に漏れ出てしまいます。これが「尿蛋白」として検出される現象です。糖尿病、高血圧、肥満などの状態で陽性になることがあります。
特に、1日0.5〜1.0g以上(定性反応で2+以上)の蛋白が認められる場合、慢性糸球体腎炎などの腎疾患が疑われますので、専門医の診察を受けることが重要です(腎生検を提案されることがあります)。また、1日3.5gを超える蛋白尿がある場合には、ネフローゼ症候群の可能性が高く、早急な専門医の診察が必要です。
腎ドックでは、定性検査(陽性・陰性)と定量検査(実際の量)を同時に行います。濃縮尿(濃い尿)や採尿量が少ない場合には、実際には陰性であっても陽性と判定される「偽陽性」が起こり得ます。一方、希釈尿(薄い尿)では軽度の蛋白尿が見逃される「偽陰性」のリスクがあります。そのため、定量検査を併用することで、より正確な判定が可能となります。
●尿アルブミン(定量)
「尿アルブミン検査」は、通常の尿蛋白検査では検出されないごく微量のアルブミンを測定する検査です。腎臓への初期ダメージを早期に捉えることができ、糖尿病性腎症をはじめ、肥満・高血圧・喫煙などが原因で基準値を超えることがあります。
さらに、尿中アルブミンの増加は、将来的な脳卒中や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患のリスク上昇とも関連しており、生活習慣を見直す契機にもなります。
1日あたりの尿中アルブミン排泄量が30mg以下であれば正常範囲内ですが、30〜300mgの範囲は腎障害のごく早期の状態とされ、原因への適切な対応により改善が可能な「可逆的状態」とされています。この段階での対処が不十分だと、やがてアルブミン尿は増加し、不可逆的な腎機能障害へと進行することがあります。300mgを超えると、腎臓の回復はほぼ困難になり、進行速度も加速するリスクが一段と高まります。
なお、この検査は保険診療では糖尿病患者に限定されていますので、糖尿病がない方は通常の診療では測定できません。腎ドックでは保険の制限を受けず、糖尿病がない方にも、より早期に腎臓の異常を検出できる機会を提供しています。
●尿潜血(定性)・沈渣
いわゆる「血尿」があるかどうかを調べる検査です。血液中の赤血球が腎臓のフィルターをすり抜けて尿中に出てくると、尿潜血が陽性になります。
特に注意が必要なのが若年層に発症しやすい「IgA腎症」です。発症初期はごく軽度の血尿しか見られないため見過ごされがちですが、次第に尿蛋白も出現し、腎機能が徐々に低下することがあります。「様子を見ましょう」と言われて経過観察が続く中で悪化するケースも少なくありません。株式会社レノプロテクトの腎ドックでは、尿所見などからIgA腎症が疑われる場合は、無料の追加検査「腎ドック・アドバンス」をご案内しており、希望される方にはGd-IgA1というIgA腎症の検査を追加しています(Gd-IgA1については、こちら)。
なお、血尿は腎臓だけでなく、尿路感染症、尿路結石、膀胱・前立腺の腫瘍など、泌尿器系の疾患によっても起こります。尿潜血が陽性となった場合は、一度、内科あるいは泌尿器科を受診されることをおすすめします。
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