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腎臓を大切に使うためのヒント
腎ドックを受けてみていかがでしたか。安心した方、心配が増えた方など、様々でしょう。それよりも、「難しい!」と感じたのではないでしょうか。でも、安心してください。医師であっても、腎臓に関する検査の把握と説明は難しいとされています。それでも、一定の知識量(リテラシー)を持つことは意味があることだと思います。私たちがこの腎ドックを通して伝えたいことは、腎臓を見つめる機会を作り、より心配のない未来につなげるための方法を皆さん自身が考えて実践していただきたいのです。
腎臓のためにできる4つの習慣についてお伝えして、今回の腎ドックを終えたいと思います。時々で良いので思い出していただけたら嬉しいです。
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生活は安定していますか
いきなりの漠然とした質問に、頭の中が“?はてなマーク?”でいっぱいになったかもしれません。腎臓は休むことなく体のメンテナンスをしています。上手に仕事を任せることができれば、腎臓の負担は軽くなります。これは私たちの日々の仕事や家事と照らし合わせるとわかりやすいですね。日々決まった仕事内容と仕事量をこなしている人に比べて、その日次第で仕事内容や仕事量が変わる人の方が当然ストレスや疲れは大きいはずです。
生活が不規則になることはよくあるはずで、その時に問題となるのは食事です。腎臓は、食事から栄養素を取り出した後の血液中に残る老廃物の処理をしています。連日飲み会が続いたり、食事する時間が毎日違ったり、栄養素やカロリー摂取量がばらばらだったり、急な用事で食事を抜かざるを得なかったりすることはありませんか。また、運動習慣があることは良いことですが、適切に水分補給しながら行わないと腎臓には大きな負担がかかります。
どんな生活を送っても腎臓は黙々と仕事をこなしています。腎臓が弱音をはくことはありませんし、私たちが腎臓の悲鳴を聞くこともできません。腎臓がばててしまってからでは手遅れです。時々は腎臓への負担軽減を考えて規則正しい生活を心がけてみましょう。
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お薬は上手に安全に使いましょう
ほとんどのお薬は血液中に入って必要な臓器に届けられて作用します。血液は必ず腎臓を通ります。また、腎臓はお薬を代謝(解毒)する臓器ですから、お薬は腎臓の負担になりやすいということは想像しやすいですね。
腎臓を悪くする代表的なお薬が抗生物質と鎮痛薬ですが、ほとんどのお薬が腎機能障害を起こしうるとされています。長期継続するお薬は担当医が定期的に安全性を確認しながら治療を継続していきますが、一時的な投薬では薬剤開始後の安全チェックをする習慣はほぼないと思います。症状が良くなることとお薬が安全に使えていることとは異なるということを覚えておきましょう。
薬害を避けるためには、不必要なお薬は使わないことが大原則となります。でも、過度に怖がる必要はありません。つらい症状を和らげてくれるお薬は便利で心強いですし、たとえお薬があなたの腎臓を一時的に傷つけても薬が終わればほとんどの場合は自然回復します。腎臓はとても強い臓器なのです!
ここで、一般的な腎機能検査のクレアチニンについて復習しておきましょう。クレアチニンには、腎機能が半分程度まで低下しないと腎機能低下を検出できないブラインド領域があるのでした。つまり、腎機能が正常域にある人の場合、腎機能が半分程度まで低下するほどの薬害が生じない限り、採血検査が行われても異常だと認識されないのです。一時的に使われるお薬は、長い人生において何度も繰り返し投与される可能性があります。数回の使用では問題にならなくとも、5回、10回と繰り返し投与された場合に腎臓の小さな傷の蓄積は無視できないものになるかもしれません。
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水分はこまめに取りましょう
「腎臓のためにたくさん水を飲みなさい」と耳にしたことがあるかもしれません。これは謝りとまでは言いませんが、正しくはありません。体は多少潤っている方が腎臓は調子が良く、余分な水分は尿として外に出ていきます。尿を作ること自体は腎臓の負担にはなりません。一方で、腎臓は体液量減少(水分不足や、いわゆる脱水)には弱い臓器です。腎臓には大量の血液が循環しており、その血液中の老廃物を濾して尿を作り出しています。腎臓自体もその血液をうけて機能を維持しているため、体内水分量(血液量)が減ると腎臓の調子が悪くなるのです。
近年の研究によると、私たちは脱水による急性腎不全(医学用語で「体液量減少性腎前性急性腎障害」と言います)を予想以上に繰り返していることが分かってきました。腎機能にゆとりがある人は多少の体液量減少が生じてもさほど問題にはなりませんが、余力がない腎臓の場合には細かいダメージが蓄積することで不可逆的な機能低下が進んでしまう懸念が高くなります。
さて、飲水量の話に戻ります。
水分摂取量は本当に人それぞれで、(食事以外に)500ミリリットル程度しか飲まない人もいれば、1日2~3リットル飲む人もいます。飲んでいるつもりでも飲めていない人や、飲んでいないつもりでも結構飲んでいる人もいます。
適切な水分摂取量は、1日に1~1.5リットル程度の尿量が出せる飲水量とされています。ちょっと難しいですね。
1日3食として食事中の水分含有量は1リットル弱です。食事とは別に1リットル程度飲むと、1日に体に入る水分量は合計で約2リットルとなります。汗や便で出ていく水分量は1日約1リットルですから、差し引き1リットルが尿として排泄されます。
これを知っていても、適切な水分摂取量をどう決めれば良いかは理解しづらいかもしれません。簡単に日々の飲水量を決められる方法を2つお伝えします。
1つ目はトイレの回数から決められます。尿の回数は1日に5~7回、1回あたりの尿量は200ミリリットル程度と言われていますから、3~4時間に1回はトイレに行けると良い、ということになりますね。トイレの回数が少ない時には追加で飲んだ方が良いことが分かります。また、尿の色からも決められます。水分が取れていない時に出る尿は濃い黄色ですが、体が水分で潤っている時に出る尿は透明色に近づくことは経験則として誰でも知っていますね。色が濃いと思った時には追加で水分を取るようにします。
また、まとめて飲むよりも、1日の必要水分摂取量を“1日かけてこまめに取っていくこと”が良いとされています。
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自分の血圧を知りましょう
腎臓を良い状態で保つために、また、負担をかけないために、血圧を管理することがとても大切です。血圧を測る習慣がある方は続けましょう。血圧を測る習慣がない方はまずは測ってみましょう。血圧計を持っていない方は安いもので良いのでぜひ購入してください。
血圧の正しい測定方法を知っていますか?
「まず、尿意・便意がある場合には排尿・排便を済ませます。椅子に正しい姿勢で座り、血圧計を取り付けます。上腕式血圧計では心臓の高さに近い上腕部に巻きます。手首式血圧計は測定する時に肘をあまり曲げない姿勢で血圧計の高さは心臓の高さにします。体をリラックスさせて1〜2分経ったらスタートボタンを押して測定開始します。」
測る時間と回数は「起きてから1時間以内と寝る前の2回」、毎日決まった時間帯に測定することを日本高血圧学会が推奨しています。毎日決まった時間に測れないのであれば、測れるタイミングで良いのでやってみましょう。これまでに測定習慣のなかった方は、まずはいろんなタイミングで測ってみて、自分の傾向を知ることから始めるのでもかまいません。どんなに忙しくても数分間が確保できないということはまずありません。測れない理由を考えるなら、まずは測れる時間に測ってみましょう。
実際に血圧を測定したら自分の傾向を把握してください。メモを取っておくと良いでしょう。いつ測っても血圧が適切で安定しているのが望ましいですが、なかなかそうはいかないものです。なかには、起きた時から1日中高い人、起きた時は高いものの日中から夜にかけて下がってくる人、朝は低いものの日中から夜にかけてじわじわ上がってくる人、安静時は低いのに人と話したりすると著明に上がってしまう人など、本当に様々です。
135mmHg以上の血圧が何度も確認される場合には、医師に相談することをおすすめします。医師に相談すると薬が増えてしまうことを懸念される方は、まずは自分でできることをやってみましょう。減塩の励行、肥満傾向の方はまず3キロ程度のダイエット、1日30分以上の有酸素運動、ストレスが強い方は定期的にストレス解消、十分な睡眠時間の確保など、できることから始めてみて、そして、血圧が改善するかどうか確認してください。うまくいかない時は、医師へ相談しましょう。
最近、クリニカル・イナーシャという言葉をよく聞くようになりました。これは各疾患で目標に達成していないにも関わらず、様子見になってしまっていることを指す言葉です。腎臓にとって良好な自宅血圧は125/75mmHg未満とされていますが(高齢者の場合は個別対応が必要です)、昔の高血圧の基準値は140/90mmHg以上であったことと患者さんの多くは薬が増えたくないこともあって135~150mmHg程度は放置になりやすいのです。130mmHg未満と比べて、130mmHg以上では腎機能の悪化速度は2倍早まることを覚えておいてください。
今回はここでおしまいです。弊社ウェブサイトでは腎臓に関する検査の記事を更新してまいりますので時々訪れてみてください。
来年?再来年?もしくは3年後?にまた腎ドックでお会いしましょう。
(最終更新日:2022年12月16日)