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eGFRについて

eGFRは、estimated glomerular filtration rateの略で、日本語では推算糸球体ろ過量と言います。いわゆる腎機能のことを指します。ただし、これは推定値です。別項でも述べたように、実測腎機能検査で腎機能を測定することはほぼ行われません。測定していないから分からない、では臨床現場では困ってしまうため、実際の腎機能を予測、推定する必要があります。その推定値がeGFRです。このページでは、eGFRについて理解を深めていきましょう。

eGFRは、採血検査でクレアチニン値を測定し、男女別に準備された式に、クレアチニン測定値と年齢を投じて算出します。これをクレアチニン換算推算糸球体ろ過量(eGFR-cre)と言います。クレアチニン値は筋肉量や体内水分量に影響を受けやすいため、筋肉量の多い若年者層ではeGFR-creはやや不安定になりがちです。筋肉量に依存しない腎機能推定検査であるシスタチンCを用いた、シスタチンC換算eGFR(eGFR-cys)もあり便利です。ただし、eGFR-cysは実際の腎機能よりもかなり高値となりやすく、特に若年者層ではeGFR-creより30~50も高く測定されることも度々あります。eGFR-cysが十分に高ければ腎機能は十分に保持されていると考えて良いですが、その測定値自体でぬか喜びしないようにしておきましょう(原則として、臨床ではeGFR-creで評価し、eGFR-cysは補助診断の位置づけです)。

ちょっと余談ですが、赤ちゃんは成人の1/5程度の未熟な腎機能の状態で生まれてきます。生後間もない赤ちゃんのクレアチニンは0.4mg/dL程度で、その後腎機能が成熟していくため、1歳頃は0.2mg/dL程度に低下します。その後は体の成長​(筋肉量の増加)とともに上昇し、成人になる頃には男性は0.7mg/dL程度、女性は0.6mg/dL程度となります。

 

身体の充実期を超えたら、老化現象に逆らうことはできません。腎機能も例外ではなく、加齢とともに落ちていきます。しかし、加齢で腎機能が落ちていくにも関わらず、筋肉量も同時に落ちていくためクレアチニンは上昇しにくいというのが問題になります​(特に50~60歳以降)。そこで、加齢変化を考慮して、「高齢者の隠れ慢性腎臓病を検出しやすいように」作られたのがクレアチニン換算eGFR計算式です。一方で、20~40歳が最も筋肉量が充実しているため、人生の中でその時期のクレアチニンが最も高値となり、腎機能が悪く見えやすいということになります。若い人の腎機能の方が高齢者よりも悪いというのはおかしいので、eGFR計算式はその点も考慮されています。ただ、eGFR計算式はクレアチニン値・性別・年齢の3つのパラメータだけで決められるため、これだけで全ての人を評価するには限界があります。また、このeGFR計算式で出されたeGFRは「平均的な日本人の体型であれば(170cm、63kg)」という前提条件が付きます。小柄な方(155cm45kg)では腎機能は過大評価され(良く見える)、大柄(185cm80kg)では過小評価されます(悪く見える)。おしなべて、eGFR-creの正確度は、「75%の人が、実測GFR±30%の範囲に入る程度」となっています。

 

一般的な健康診断では食事抜き飲水量最小限で受診されることが多いと思います。つまり、体液量減少・血液濃縮の影響を受けてクレアチニンは高めに検出される結果、eGFR-creは低く出る可能性があります。でも、実際に健康診断で腎機能低下を指摘された場合、飲食を控えた影響なのか、それとも本当に腎機能が悪いのかを判断することはできません。一方で、シスタチンCは体液量や筋肉量に影響は受けないと言われています。シスタチンCからもeGFR値を出す計算式が作られており、健康診断でクレアチニンが高めに検出されてしまう人にとってはシスタチンC及び、eGFR-cysを使用することが適切です。しかし、シスタチンCを検査する機会はなかなかないと思います。

 

レノプロテクト腎ドックではどの年齢層であっても、またどんな体格であってもより正確な腎機能を推定できるよう、クレアチニン・シスタチンCの同時測定を行います。さらにオプション検査として24時間クレアチニンクリアランス検査も受けられますので、推定値ではなくて実測値での評価も行うことで多角的評価を試みます。

 

*レノプロテクト腎ドックでは、日本人用のeGFR算出式を採用しています。日本人でない方は参考値となります。

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