尿蛋白とアルブミン尿
- 臼井亮介

- 2025年9月18日
- 読了時間: 5分
更新日:3月16日
こんにちは。株式会社レノプロテクト代表の臼井亮介です(日本腎臓学会専門医・指導医)。
尿は、血液が腎臓のフィルターを通ってろ過されたものです。言い換えれば、つい数分前まで血液の一部として体内を巡っていた液体。尿検査は主に腎臓の状態を知るためのものですが、血液検査・既往症・現病・身体状態などと組み合わせることで、より立体的に体の状態を把握することができます。
ここでは、腎臓の健康を知るうえで重要な「尿蛋白とアルブミン尿」について、分かりやすく解説します。

概要:尿蛋白とアルブミン尿は現在と未来を評価する検査
尿蛋白とアルブミン尿の陽性判定は、「現在、何らかの原因によって、腎臓に負担がかかっているか、腎臓のフィルター機能が壊れかけていることを示唆」すると同時に、「将来、腎機能が加齢変化以上の速度で悪くなっていくことや、心血管疾患(心筋梗塞や脳梗塞)の発症や死亡のリスクが高まっていることを示唆」する検査です。
尿蛋白(定性・定量)
尿蛋白は、腎臓のフィルター機能(糸球体)の状態を反映する重要な指標です。健常な腎臓では、1日に排出される蛋白は0.1g/日(100mg/日)未満ですが、フィルターの損傷や圧負荷によって、より多くの蛋白が尿中に漏れ出ることがあります。
尿蛋白が0.15g/日(150mg/日)を超えると、慢性腎臓病の診断基準に該当します。尿蛋白は「現在、腎臓に大きな負担がかかっていること」を映し出す鏡であるのと同時に、「将来の腎機能悪化を予測する」検査です。負担は取ることができますが、一度腎臓が壊れてしまうと元には戻せないため、壊れる前に原因の特定と早期の対応が求められます。糖尿病、高血圧症、肥満、慢性糸球体腎炎などの疾患や、喫煙者では陽性になることがあります。
尿蛋白の定性反応は、(-)、(±)、(1+)、(2+)、(3+)、(4+)の6段階で判定されます。
・健康診断や人間ドックでの(±)判定の多くは、尿が濃いための偽陽性です。過度な心配をする必要はありませんが、再検査で確認することが望ましいです。
・(2+)以上は明らかな陽性であり、定量検査と専門医の診察が必要です。慢性糸球体腎炎などが疑われた場合は腎生検を提案されることがあります。
・1日3.5gを超える蛋白尿ではネフローゼ症候群の可能性が高く、早急な対応が必要です。この場合は(4+)に該当します。
陽性判定は、その程度にかかわらず、再検査時に定量検査も併せて行うことが望まれます。定量検査により慢性腎臓病のステージ判定が可能となり、対応すべきことがより明確になります。
腎ドックでは、定性・定量検査を同時に行いますので、より正確な評価を行います。
アルブミン尿(定量)
アルブミン尿は、他にも尿アルブミン、尿中微量アルブミン、アルブミンクレアチニン比(ACR)といった呼称がありますがどれも同じものを指します。
アルブミン尿は、通常の尿蛋白検査では検出されない微量のアルブミンを測定する検査です。アルブミンは尿蛋白の1/3〜1/2を占め、0.03g/日(30mg/日)以上で陽性と判定されます。ただし、腎臓専門医としての経験的には、腎臓病ではない方や、腎臓にとってのリスク疾患(糖尿病・高血圧症・肥満症など)を持たない健康的な方のアルブミンは10mg/日未満です。このため、13~30mg/日をグレーゾーン(異常とまでは言わないが、注意すべき時期)と捉える医師もそれなりにいます。
この検査は、腎臓への初期ダメージを捉えるのに非常に有用で、糖尿病性腎症、高血圧症、肥満、喫煙などが原因で基準値を超えることがあります。また、アルブミン尿は動脈硬化性疾患(脳卒中・心筋梗塞など)や死亡のリスク上昇とも関連しており、生活習慣を見直すきっかけにもなります。
・30〜300mg/日:腎障害の初期段階です。このときの腎障害の状態は可逆的なことが多く、生活習慣を見直し整えることで回復が期待できます。この段階での尿蛋白は(-)~(1+)です。
・300mg/日超:腎障害の程度は不可逆的な状態まで進行していることが多く、以降は腎機能悪化のリスクが高まります。この段階での尿蛋白が(2+)以上になります。陰性にまで戻すことはできなくても、管理を改善させることで心血管疾患や死亡リスクを下げることはできますので諦めないことが大切です。
なお、保険診療では糖尿病患者に限定される検査ですが、腎ドックでは保険の制限を受けず、どなたにもより早期の腎臓異常を検出する機会を提供しています。
健康診断での尿蛋白の意義
会社員が毎年受けている企業健診の基本的な検査項目は労働安全衛生法が規定しており、会社や医療機関が独自に検査項目を決めているわけではありません。腎臓に関する健診項目では、尿検査で尿蛋白と尿糖が必須項目となっている一方で、腎機能評価検査(クレアチニンとeGFR)は必須項目にはなっていません。その理由は、「腎機能がある程度悪くなれば尿蛋白が陽性になる」との健康診断を専門とする医師の見解が根強いことが原因です。
腎臓専門医として、この見解は時代に合っていないことを指摘しておきたいと思います。
30年前の腎臓病の特徴は、原疾患として糖尿病(糖尿病性腎臓病)と慢性糸球体腎炎(主にIgA腎症)が多かったため、病状が悪化すると尿蛋白が出るタイプの腎臓病が多かったと言えます。しかし、近年は、長寿が原因となる腎硬化症がかなりの割合を占めるようになりました。腎硬化症は目立った尿蛋白が見られないのが特徴の一つですので、腎機能低下をスクリーニングすることにおいて、尿蛋白検査だけでは健診項目の意義(腎機能低下を早期に検出する)が低下してきています。
逆の見方をすれば、腎硬化症が多い現状を鑑みると、尿蛋白陽性の場合にはかなり進行した腎機能低下の可能性がありますので、必ず再検査を含めて医師へ相談するようにしてください。
