クレアチニンとシスタチンCとウロモジュリンの違い
- 臼井亮介
- 10月7日
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更新日:7 日前
こんにちは。株式会社レノプロテクト代表の臼井亮介(日本腎臓学会専門医・指導医)です。
ここでは、従来の腎機能検査(クレアチニン・シスタチンC)と、ウロモジュリンの違いについて、比喩を交えながら分かりやすく解説します。後半では、腎機能を評価する際に検査値そのものだけでなく、検査値の「経年変化」に注目していただきたい理由についても触れていきます。
まず、ひとつイメージをしてみてください。目の前に、静かに時を刻む砂時計があるとします。透明なガラスの中で、細いくびれを通って砂が落ちていく様子は、どこか生命の流れを感じさせます。砂時計には二つの部屋があり、上段と下段の砂を以下のように捉えてみます。
◇ 上段の砂:ウロモジュリン・腎機能
◇ 下段の砂:クレアチニン・シスタチンC

砂時計を立てると、上段の砂は時間とともに下段へと落ちていきます。これはまさに、腎機能が加齢とともにゆるやかに低下していく様子と重なります。ウロモジュリンは、腎臓が元気なときに多く作られるタンパク質であり、その量は腎臓の「余力」や「生命力」を映し出しています。砂時計の上段の砂が静かに減っていくように、年齢を重ねるにつれて、ウロモジュリンが作られる量も少しずつ減っていきます。
一方、クレアチニンとシスタチンCは、下段に落ちた砂の量を測る検査ですから、この測定値だけで上段の砂の量である腎機能を十分に捉えることはできません。しかし、これまでに積み重ねた多くの臨床的な知見から、下段の砂の量から上段の砂の量がどのぐらい残っているのかだいたい予測できることが分かっていました。そして、その予測は医療者個々の経験則ではなく、よりロジカルに、より普遍的に行えることが理想的です。
そこで登場するのが「eGFR(推算糸球体ろ過量)」計算式です。これは、下段の砂の量(クレアチニンやシスタチンCの値)と、砂が落ち始めてからの時間(年齢)から、上段の砂の残量(腎機能)を推測する仕組みです。
このように考えると、ウロモジュリンは「直接、上段の砂の量を測る」検査であり、クレアチニンやシスタチンCは「間接的に、下段の砂から上段の残量を推測する」検査と言えるでしょう。
さて、上段の砂の残量がわずかになると、腎臓の機能は限界に達し、透析や腎移植が必要になります。その目安は、ウロモジュリンは30~40ng/mL未満、eGFRは10ml/min/1.73㎡未満です。実際の腎機能と砂時計には重要な違いがあります。砂時計はひっくり返せば、砂を上段に戻せます。しかし、腎機能はそうはいきません。腎機能もウロモジュリンも、一度減ってしまうと元に戻すことができません。だからこそ、今どれだけの砂が残っているのかを定期的に確認し、その変化を評価することが大切です。ウロモジュリンは、その「残り時間」を教えてくれる静かな語り部のような存在です。
腎機能の経年変化を知ることは、生活習慣を見直すきっかけになります。食事、運動、睡眠、ストレス管理、そして、疾患の管理——これらの積み重ねが、砂の落ちる速度を緩やかにする可能性があります。
従来検査とウロモジュリンの違い、そして腎機能の経年変化に注目していただきたい理由がイメージできたでしょうか?この砂時計の物語が、皆さんの健康を見つめ直すヒントになれば幸いです。
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