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ウロモジュリン

  • 臼井亮介
  • 2024年4月30日
  • 読了時間: 10分

更新日:15 分前

【特徴】

・クレアチニン、シスタチンCに次ぐ、3つ目の腎機能評価検査

・機能ネフロン量(functioning nephron mass)を反映

・定期測定により、腎臓の加齢変化(エイジング)を数値評価

・血液検査による急性間質性腎炎や尿細管障害の診断補助

ウロモジュリン
コンセプト「時を刻む検査」

 こんにちは。株式会社レノプロテクト代表の臼井亮介です(日本腎臓学会専門医・指導医)。

 ここでは、血中ウロモジュリンについて分かりやすく解析します。まず、ウロモジュリンのイメージと、従来検査(クレアチニンとシスタチンC)とウロモジュリンの違いについての解説からはじめていきます。興味をもっていただけたら嬉しく思います。



●血中ウロモジュリンのイメージ:ヒットポイント

●ウロモジュリンと、クレアチニン・シスタチンCとの違い:砂時計

 血中ウロモジュリンは、ゲームキャラクターのヒットポイント(体力や生命力)をイメージすると理解しやすいと思います。ゲームの中でキャラクターごとに最大ヒットポイントが異なるように、血中ウロモジュリンの最大濃度も人によって異なります。また、ゲームではヒットポイントを使い切ってしまうとゲームオーバーになったり、強制的にスタートに戻されたりしますが、腎臓のヒットポイント(ウロモジュリン・腎機能)を使い切ってしまうと、血液透析が必要となります。


 ゲームではヒットポイントが失われても回復の魔法やアイテムがあったり、休息によりヒットポイントを回復できます。一方で、失われた腎機能は回復しないだけでなく、加齢に伴って必ず低下していきますので、腎臓でしか作られないウロモジュリンは長期的にはほとんどの方で緩やかに低下していき、回復することはありません(検査誤差や体内水分バランスの乱れに起因した変動は見られます)。

ウロモジュリン検査のイメージ:腎臓ヒットポイントを数値化
ウロモジュリンのイメージ:ヒットポイント・生命力

 続いて、従来検査(クレアチニン・シスタチンC)と、ウロモジュリンの腎機能を評価する時の視点の違いを「砂時計」を用いて解説します。


クレアチニンとシスタチンCとウロモジュリンの違い

 腎機能とウロモジュリンは砂時計の上段の砂の量と考えてください。砂時計には色々な種類があり、砂の量や砂が落ちる速度は様々です。しかし、どの砂時計にも共通していることは、上段の砂は必ず減っていくということです。ウロモジュリンは腎臓自体が発するシグナルですので、定期的に測定することで腎機能の減り具合を知ることができます。なお、上段の砂の量である腎機能(GFR)が10%を下回ったり、ウロモジュリンが30~40ng/mLを下回ると透析が必要になります。


 一方で、クレアチニンやシスタチンCは砂時計の下段の砂の量を測定していると考えることができます。つまり、下段の砂の量がある程度たまってくると、腎機能が悪くなっているかも?というアラートを出す検査と言えます。ただし、下段の砂の量を測定しても、上段の砂の量、つまり正確な腎機能は分からないので、下段の砂の量から上段の砂の量を推測する必要があります。これが推算糸球体ろ過量(eGFR)です。


 いかがでしょうか。ウロモジュリンのイメージがついたでしょうか。このように、腎臓の体力や生命力を“見える化”する検査がウロモジュリンです。長い人生を考えれば、なるべく若いうちに最高値を確認しておくことをお勧めしています。これにより、担当医がいない健康な時から、自分自身で腎臓ヒットポイントを見ながら生活習慣をより積極的にコントロールすることができるようになります。



 続いて、やや詳しい専門的な解説に進みます。




●腎臓の状態を“腎臓自身の声”として捉えられる、唯一の血中蛋白です。

 ウロモジュリンは、腎臓でしか作られない、きわめて臓器特異性の高い蛋白質です。しかも、腎臓の中でも「尿細管」と呼ばれる限られた部位でのみ産生されます。その大部分は尿中に排泄されますが、ごくわずかに血液中にも移行します。弊社では、この微量の「血中ウロモジュリン」を正確に測定する技術を独自に開発しました。血中ウロモジュリン濃度は、腎臓の働きをダイレクトに反映しており、従来のようなクレアチニンやシスタチンCといった間接的なマーカーでは捉えきれなかった「腎臓の声」を、より直接的に“聴く”ことが可能になります。


 血中ウロモジュリンの最大の特徴は、若く、腎機能が良好な人ほど数値が高く、病気や加齢により腎機能が低下すると数値が下がるという「正の相関関係」にあることです(図1)。これは、腎機能が落ちるとウロモジュリン自体の産生量が減るためです。


 従来より使われている腎機能マーカー、たとえばクレアチニンやシスタチンCはそれ自体は腎臓と直接的な関係がないことと、腎機能が低下するにつれて数値が上がる「負の相関関係」にあるため、評価にはeGFR(推算糸球体ろ過量)の計算が必要です。一方、ウロモジュリンは「濃度が下がる=腎機能が下がる」と直感的に読み取れるため、eGFRを計算しなくても腎機能の推移を把握しやすいという利点があります。


 クレアチニン値が0.70mg/dLから0.77mg/dLへ1割上昇しても、小数点第二位の変化は見逃されがちです。この時、eGFR値も93から84に1割悪化していますが、正常範囲内での変化との理由で問題視されないことも少なくありません。その結果、腎機能の悪化に気づくのが遅れ、気づいたときには不可逆的な障害が進行していることもあります。これに対して、ウロモジュリンは数値自体が大きいため、たとえば300ng/mLから270ng/mLへと1割下がった場合、その変化が視覚的にも分かりやすく、腎機能の低下にいち早く気づくことができます。

ウロモジュリン値と腎機能は高い正の相関関係
図1: ウロモジュリン値とeGFR値は高い正の相関関係


●ウロモジュリンで見る「腎機能の推移」

 ウロモジュリンはeGFR(推算糸球体ろ過量)と正の相関を示しますが、特に腎機能が良好な人ほど、血中ウロモジュリン濃度に大きなばらつきが見られます(図2)。これは、同じくらいの腎機能であっても、ウロモジュリン値に個体差が大きいことを意味しています。ただし、この“ばらつき”は検査精度の問題ではなく、腎臓の構造や働きの個体差を反映した、ごく自然な現象です(冒頭で書いたようにゲームキャラクターのヒットポイントをイメージしてください。キャラクターごとに最大ヒットポイントが異なることは当然のことです)。


ウロモジュリンの個体差
図2: ウロモジュリン値のばらつき

 では、このように個人差の大きいウロモジュリン値を、どのように活用すれば良いのでしょうか?


 それは、「自分自身の基準値(ベースライン)を知り、時間の経過に伴う変化を見ること」です。初回測定値を基準とし、定期的に反復測定することで、どのくらいのスピードで腎機能の“貯金=ヒットポイント”を使っているかが把握できます。言い換えれば、「ウロモジュリンは、一定期間における腎機能消費量を定量評価する検査」なのです。



●大切なのは“値の高さ”より“変化の傾向”

 ウロモジュリン値は、腎機能が保たれている方では200~400ng/mLと幅広く分布します。しかし、200ng/mLの人が400ng/mLの人より腎臓の状態が劣っているとは限りませんし、その逆も然りです。これは単なる“個体差”であり、数値の高低が優劣を示すものではありません。


 重要なのは「その数値が時間とともにどう変化していくか」です(図3)。たとえば、初回測定値が200ng/mLでも、その後の推移が安定していれば、腎機能も安定していると考えられます。一方で、初回が400ng/mLでも、明らかな低下が続くようであれば、腎機能の悪化が進んでいる可能性もあります。もちろん、将来を完全に予測できるわけではありませんが、変化の傾向を見ることには大きな意味があります。

 

ウロモジュリンの定期測定で腎臓ヒットポイントを見える化
図3: ウロモジュリンは変化を評価する検査

●「減り方」を見ることで過去のふり返りと、今後の対策が立てられる

 臓器機能は加齢とともに誰でも少しずつ低下します。eGFRは年間0.5程度ずつ下がるとされており、これはウロモジュリン値にも表れ、長期的にはほとんどの方で低下します。こうした変化はいわゆる「老化」や「経年劣化」ともいえる自然なことですが、生活習慣(喫煙、運動、食事など)や生活習慣病(糖尿病、高血圧症、肥満症など)によって、その進行速度が早まることがあります。


 自分の腎機能の“減り方”を定期的にチェックし、変化が速いと感じたら生活をしっかり見直す。ウロモジュリンは、その気づきのための優れたツールとなります。なお、年間の変化が目立たなければ、腎機能は安定しているとみてよいでしょう。



●医師に頼らず、自分で腎機能を管理する時代へ

 健康な時期や、まだ自覚症状のない未病段階では、主治医がいない方がほとんどでしょう。だからこそ、生活習慣や検査結果を自分自身で把握し、主体的に健康を守ることが大切です。


 ウロモジュリンは、そのような“自己管理ツール”として非常に適していると私は考えています。検体検査というと「病気発見ツール」という印象を持たれていると思いますが、ウロモジュリンは「健康なときにこそ活用したい検査」です。


 慢性腎臓病と診断された後も有用ではありますが、それ以降は保険診療で測定可能なクレアチニンでの評価で十分です。ウロモジュリンは、腎機能に余力のある段階での定期的なチェックにこそ意味があります。



●ウロモジュリンに「基準値」を設けない理由

 私は、上記のごとく、ウロモジュリンを「腎機能のスナップショット」ではなく、「その推移を評価する検査」として捉えています。そのため、あえて正常・異常を分ける明確な基準値は設けていません。


 ただし、参考値として以下のような統計的傾向があります:

・200~400ng/mL:腎機能が概ね保たれている

・150ng/mL未満:eGFR<60(慢性腎臓病)を示唆

・30~40ng/mL未満:eGFR<15(末期腎不全)を示唆


 なお、150ng/mL未満であっても、クレアチニンやシスタチンCなど他の腎機能指標が正常範囲内のこともあります。また、どの程度ウロモジュリン値が低下すれば、クレアチニンやシスタチンCが上昇するかは、やはり個人差があります。初回測定時にはこれらの指標を同時測定しておくとより経過を評価しやすくなります。



●若いうちに“基準値=最大ヒットポイント”を知っておこう

 ウロモジュリンは「腎機能の体力・生命力」を映し出すマーカーともいえます。冒頭でも述べた通り、腎臓の“ヒットポイント”を可視化するイメージです。その意味でも、もっとも身体が充実している時期(25〜40歳)に自分の基準値を確認しておくことを強く推奨します。また、腎機能へのリスク疾患である糖尿病や高血圧症を持病とされている方は、この検査を知ったなるべく早い時期に初回測定値を取っておくことをお勧めします。その後、定期的に測定することで、自分自身で腎機能の変化を評価できるようになります。


 なお、体内の水分バランスが乱れると、変動が大きくなることがあります。また、薬剤の影響、特殊病態、生活習慣の変化などがウロモジュリン値に及ぼす影響については、まだ明らかでない部分も多くありますので、体調が良好で安定している時期に検査を受けることをおすすめします。


●もっと詳しく知りたい方へ

 「ウロモジュリン - 医療従事者向け -」のコラムをチェックしてください。専門的な内容を含みますが、興味を持って貰える情報満載です。


●検査希望の方へ

 血中ウロモジュリン測定は腎ドック内の1検査として測定されますが、これだけ測定したい方も検査を受けていただくことが可能です。

・個人の方

 血中ウロモジュリン測定が受けられる提携医療機関リストをご確認ください。

・医療機関の方

 検査委託については、お問い合わせフォームからご相談ください。


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<特許情報>

 ウロモジュリン関連特許として、以下3件を保有しております。ウロモジュリン測定の商業利用をご検討されている企業様はご相談ください。

 第7130313号

 第7566097号

 第7577170号


<技術情報>

 血中ウロモジュリンは、ELISA法(Enzyme-Linked Immunosorbent Assay)で測定しています。このELISAキットは、弊社医師が開発し、日本を代表する抗体試薬メーカーである株式会社免疫生物研究所によって製造しています。同社は、品質マネジメントシステムの世界標準規格であるISO13485の認証を受けており、厳しい品質管理のもとで作製され、十分な精度管理が達成されたキットを弊社で使用しています。

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