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体外診断用医薬品と検査試薬

  • 臼井亮介
  • 2023年9月1日
  • 読了時間: 4分

更新日:4月14日


 医学の進歩とともに、バイオマーカー(血液や尿などを用いた検体検査)の研究も日々進展しており、すでに臨床現場で活用されているものだけでも数千種類にのぼります。さらに、今後の実用化が期待されている研究段階のバイオマーカーも数多く存在します。


 ここでは、そうした研究段階のバイオマーカーが実際の医療現場で使用できるようになるまでの流れと、その困難さについてご紹介します。



バイオマーカーが「診療で使える検査」になるまで


 研究のなかで有用性が高いと判断されたバイオマーカーを、保険医療の現場でも広く活用できるようにするためには、まず「体外診断用医薬品(IVD)」としての承認を受ける必要があります。その際には、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)に相談し、厳格な基準による審査を受けることになります。


 PMDAの審査に合格し、IVDとして承認された検査だけが、保険診療の枠組みの中で正式に扱われることになります。日本では原則として「保険診療と自由診療の混合」が認められていないため、病院などの保険医療機関で受けられる検査のほぼ全てが、このIVD承認を得たものに限られます(まれに、希少疾患などを対象とする検査については、IVD未承認でも保険収載されるケースがあります)。


 IVDではない検査は、一般に「研究用試薬(RUO: Research Use Only)」あるいは「薬事未承認検査(LDT: Laboratory Developed Test)」と呼ばれます。ただし、日本にはLDTという制度上の明確な枠組みは存在しておらず、IVDではない検査は、RUOと位置付けられています。



日本におけるIVDと保険収載の関係


 国民皆保険制度のもとでは、IVDとして承認を受けることが、そのまま「全国の保険医療機関で検査を受けられる状態にする」こと、つまり保険収載・薬価収載を目指すこととほぼ同義になります。


 海外では「IVDの承認」と「保険でカバーされること」は別の話とされる国も少なくありませんが、日本では保険診療が基本となっているため、保険収載されていない検査に対しては、一般の方が不安を抱いたり、信頼性に疑問を持たれることもあるようです。


 ちなみに、血中ウロモジュリン測定は日本国内ではRUO扱いですが、ヨーロッパの一部の国では測定機器がすでにIVDとして認可されいます。



IVD承認のハードルと課題


 検査がIVDとして承認されれば、全国どこでも安価に検査を受けられるようになり、国民全体にとってのメリットは非常に大きなものになります。しかし、そのためには厳しい審査を突破する必要があり、承認申請に先立って「治験」の実施が求められます。


 治験には多くの協力者や医療機関、さらには数億円単位の資金が必要とされますが、開発を行う企業がその費用を自力で負担する必要があります。さらに、無事に保険収載されたとしても、検査費用は開発費に対してかなり低く設定されやすく、収益確保が難しくなる場合もあります。たとえば、研究開発から治験完了まで5億円かかったとして、1検査1,000円で保険収載され、1検査あたりの原価が250円だったとすると、200万回もの膨大な検査オーダーを受けてはじめて、検査会社は開発費を回収できるということになります。先発医薬品が先発期間を超えるとジェネリック医薬品に置き換わるように、検査試薬もジェネリック試薬に置き換わります。処方薬と異なり、検査は飛ぶように売れることはまずあり得ない事情から、日本では開発費を回収できないことが常態化しています。こうしたことから、RUOからIVDへの転換は日本では非常にハードルが高いといわれています。



弊社の取り組み


 弊社で使用しているウロモジュリン測定機器は、日本を代表する抗体試薬メーカーである株式会社免疫生物研究所によって、厳格な品質管理のもとで製造・精度管理が行われています。弊社の腎ドックでは、IVDとして承認された検査とRUOの検査を組み合わせ、腎機能を多角的かつ総合的に評価しています。IVDとRUOの両方を適切に組み合わせることで、現時点での最良の評価と、将来への備えの両立が可能になると私たちは考えています。



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