2002年に慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD(シーケーディー)と読みます)という疾患概念が作られました。CKDは慢性に経過する多くの腎臓病を指す包括概念です。
【CKDの診断基準】
GFR(*1)が60(mL/min/1.73m2)未満に低下していること
尿検査で蛋白陽性、画像検査、病理検査等により腎障害の存在が明らかであること
このいずれかの状態が3か月以上持続している場合をCKDと定義しています。
(*1; glomerular filtration rate (GFR)、糸球体ろ過量、いわゆる腎機能のことです。一般的に、クレアチニンから計算した推算糸球体ろ過量 (eGFR)で代用します。)
まず、腎機能による区分があります。GFRというのは、いわゆる腎機能のことで、正常は90~120(ml/min/1.73m2)です。GFR100を100%と考えると把握しやすいので、GFRの正常値を100と覚えることをお勧めしています。
つまり、腎機能が40%以上低下して、残り60%を下回った状態がCKDということです。また、尿検査や画像検査等で腎臓病が明らかにあると判断された場合、腎機能の低下が明らかでなくともCKDとして扱うことになっています。
CKDの疫学と臨床像
CKDの診断基準にあてはまる日本国民は1,300万人(成人の8人に1人)、まさに国民病と言える患者数であり、決して他人事ではありません。
腎臓は体を正常な状態に保つ重要な役割を担っているため、腎臓の機能が低下することで、様々な不具合を生じますが、自覚できる症状はほとんどありません。それが腎臓の強いところでもあり、怖いところでもあります。また、これが患者を増加させている原因となっているかもしれません。
CKDが進行すると、むくみ・貧血・倦怠感・息切れなどの症状が現れてきます。これらの症状を自覚するときには、腎機能はすでにかなり悪化しており、残り3割未満のことが多いと言われています。腎臓は一度悪くなってしまうと治ることはなく、放っておくとどんどん進行して、透析療法や腎臓移植を行わなければいけなくなる可能性がでてきます。
腎臓だけにとどまらない問題
CKDが社会問題となっているのは、腎臓だけの問題にとどまらないからです。腎臓病を患い、悪化させると、心疾患・脳卒中・認知症・骨折・感染症などの発症リスクが2~3倍以上に増加してしまいます。
下図は腎不全の原因として最も多い糖尿病患者さんのデータです。腎臓病が悪化して次の病期に進行するのは年2~3%と意外と多くなく、それよりも、腎臓病が悪化した場合には死亡率が格段に高くなり、長期生存が難しくなることが問題なのです。「透析にはなりたくない」と患者さんがよく仰りますが、実際には、血液透析等の腎代替療法が開始される頃までに、上記のような疾患をきっかけに命を落としてしまう患者さんの方が多いのです。
腎臓専門医が伝えたい大切なこと
近年、CKDの重要性が高まってきたことから、腎臓病重症化予防キャンペーンとして雑誌で特集が組まれたり、ポスター広告やテレビCMなどのメディア広告が増えてきています。これらは、「CKDの早期発見・早期介入」を目的としています。
でも、本来、私たちが望むのは、CKDにならないことではありませんか?
加齢変化、つまり、老化現象として徐々に低下していく腎機能をできるだけ年齢相応で維持するためには、未病の段階から腎機能を定期的に評価し、CKDにならないための対策を個別に講ずることが望ましいと考えられます。しかし、現在行われている健康診断や保険診療では経時的変化に対するアラート機能に限界があります。ほとんどの症例は徐々に腎機能が低下してCKDの診断に至りますが、大半のCKD患者さんは病気の指摘がなされるまでそれに気づいていなかった、気づかされなかったというのが現実です。そして、CKDの診断が確定した後は、一生涯に渡り、CKD患者さんとして過ごすことになるのです。
弊社は、将来CKDで悩む人を1人でも減らすため、
「健康であること、また、未病段階を評価することの大切さ」を伝えていきます。
<関連リンク>
・eGFRについて
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