尿蛋白とアルブミン尿
- 臼井亮介
- 9月18日
- 読了時間: 3分
更新日:11月30日
株式会社レノプロテクト代表の臼井亮介です(日本腎臓学会専門医・指導医)。
尿は、血液が腎臓のフィルターを通ってろ過されたものです。言い換えれば、つい数分前まで血液の一部として体内を巡っていた液体。尿検査は主に腎臓の状態を知るためのものですが、血液検査・既往症・現病・身体状態などと組み合わせることで、より立体的に体の状態を把握することができます。
ここでは、腎臓の健康を知るうえで重要な「尿蛋白とアルブミン尿」について、分かりやすく解説します。

●尿蛋白(定性・定量)
尿蛋白は、腎臓のフィルター機能(糸球体)の状態を反映する重要な指標です。健常な腎臓では、1日に排出される蛋白は0.1g(100mg)未満ですが、フィルターの損傷や圧負荷によって、より多くの蛋白が尿中に漏れ出ることがあります。
尿蛋白が0.15g/日(150mg/日)を超えると、慢性腎臓病の診断基準に該当します。将来の腎機能悪化を予測する検査であるため、原因の特定と早期の対応が求められます。糖尿病、高血圧、肥満、慢性糸球体腎炎などの疾患や、喫煙者では陽性になることがあります。
尿蛋白の定性反応は、(-)、(±)、(1+)、(2+)、(3+)、(4+)の6段階で判定されます。
・健康診断や人間ドックでの(±)判定の多くは、尿が濃いための偽陽性です。過度な心配は不要ですが、再検査で確認することが望ましいです。
・(2+)以上は明らかな陽性であり、定量検査と専門医の診察が必要です。慢性糸球体腎炎などが疑われた場合は腎生検を提案されることがあります。
・1日3.5gを超える蛋白尿ではネフローゼ症候群の可能性が高く、早急な対応が必要です。この場合は(4+)に該当します。
陽性判定は、その程度にかかわらず、再検査時に定量検査も併せて行うことが望まれます。定量検査により慢性腎臓病のステージ判定が可能となり、対応すべきことがより明確になります。
腎ドックでは、定性・定量検査を同時に行いますので、より正確な評価を行います。
●アルブミン尿(定量)
尿アルブミン検査は、通常の尿蛋白検査では検出されない微量のアルブミンを測定する検査です。アルブミンは尿蛋白の1/3〜1/2を占め、0.03g/日(30mg/日)以上で陽性と判定されます。
この検査は、腎臓への初期ダメージを捉えるのに非常に有用で、糖尿病性腎症、高血圧、肥満、喫煙などが原因で基準値を超えることがあります。また、動脈硬化性疾患(脳卒中・心筋梗塞など)のリスク上昇とも関連しており、生活習慣を見直すきっかけにもなります。
・30〜300mg/日:腎障害の初期段階です。腎障害の状態は可逆的なことが多く、生活習慣を見直し整えることで回復が期待できます。この段階での尿蛋白は(-)~(1+)です。
・300mg/日超:腎障害の程度は不可逆的な状態まで進行していることが多いです。以降は腎機能悪化のリスクが高まります。この段階での尿蛋白が(2+)以上になります。
なお、保険診療では糖尿病患者に限定される検査ですが、腎ドックでは保険の制限を受けず、どなたにもより早期の腎臓異常を検出する機会を提供しています。
